20






高く乾いた音の後は耳鳴りで、最初は何が起きたかよく判らなかった。
遅れて続く痺れと痛みで、やっと横面を張られた事に気づく。
明けの陽光で青と金に照る畳みに、擦れた腕はそのまま置いて、蹲ったまま、視線だけで相手を見た。
静かに喉で笑う音。

「いい眸だ」

男が言った。

「いいか、お前のその目が唯一の証だ。戯けに耳を貸すな。揺らぐな。惑わされるな。跪かず、卑下もせず、誇りで以って認めさせろ。そして忘れるな」

胸倉を掴み上げられ、間近に鷹の目が光る。

「お前の仇はこの俺だ」

その目は幽かに赤かった。






宵闇は紗合わせ越しに見る絹、一瞬の躍動に散る蜻蛉の羽ばたきのようだ。
筋肉の連動に脈打つ鼓動。お互いのしじまに干渉こそしないものの、物音の無い空間では生きている証こそ顕著に響いている。
陽も落ち、灯りを入れない室内は暮雪を眺める倦さに似る。それでも政宗は微動だにしないまま、再び寝入ったのか、動かなくなったをつくづくと見下ろしていた。
見る限り、外傷は綺麗に癒えている。といっても、露出しているのは持ち上げた腕と瞳を閉じた小さな顔だけだ。
暮れの所為か顔色はよく見えないが、異常なほどに痩せ細っているとか、痘痕が其処彼処に蔓延っているとか、そういう具合には見えない。目鼻立ちのはっきりとした独特の美しい造りは相変わらずだし、長さの割に量の少ない黒髪も、今はしっとりと照りながら肩口に纏めて収まっていた。
睫毛の反りは儚く、呼吸の度の幽かな振動さえ反映し慄えている。横たわる肌は青闇を称えてなお、これほど透けるものかと思うほどだ。瑕も斑も見当たらない。
けれど、生気を感じないのだ。
凹凸は陰影を持ち、存在する証として敷布団には皺が寄る。
幽かだが上下する胸と、呼応する吐息。
確かに、横たわっているのだ。
だがその存在は驚くほど希薄で、幽かで、心許無い。よくよく見つめ、考えなければ、今や誰もこれを人とは感じないのではないだろうか。
現に、彼自身、目の前の彼女が現か幻か、少し疑い始めていた。そう、夢を見ているのかもしれない。寝ても覚めても果ては同じの、くだらない夢だ。
元々、歓待は期待していなかった。横臥したままの出迎えも当然で、まさか笑みが見れるとも思ってはいない。けれど、実際に相対して、募る思いは歯止めの利かない類だったと思い知る。結局は何も紡がない娘らしい唇を目にするのは、呪詛を吐かれるより堪えた。
直視すら耐えかねて、政宗は視線を徒に横這いさせる。彷徨って、常人より狭い視界は見慣れない室内を二往復した。
飾り気も何もない。年頃の娘らしいものも、貴人らしい整いも、何一つ。

「御身体は」

沈みかけていた思考の網を打ち消して、柔らかい声が胸を打つ。

「もう、よろしいのですか」

いつの間にか、天井へと向けられていた顔を倒して、は真直ぐに政宗を見ていた。
暗がりの中で見える表情は心許無いが、口元は幽かに笑みを象っている。

「酷い傷でした。よもや後に響かれるのではないかと思うほど……、でも、もう御立ちになられるのですね。…わたしは随分長いこと、眠っていたようです」

答えを返さない政宗を訝るでもなし、次に彼女は非礼を詫びた。

「折角お越し頂いているのに、夢現で失礼致しました。…せめて、身を起こしたいのですけれど…、生憎、まだすこし、自力では難しくて」

御見苦しくて申し訳ありません、と乾いた唇が謡う。
ゆっくりとした瞬きが束の間の空虚を補った。瞳には星ほどの燈が点に灯っている。焦点は合うのに、改めてと感情のゆれを全て塗り潰した眼孔は真に光を持ってはいない。
政宗は見つめ返したまま、唇を一度開きかけたが、また閉じる。
断片的な言葉が幾つも咽喉にせり上がり、絡まって、結局音は出てこない。
も一度口を噤んで、倒した顔はそのままに、視線は少し宙に逸れていた。
そのまま、また無音。
次にこれを打破したのは、ゆっくりと背を浮かせた竜である。
溜息とも吐息ともつかないささやかな呼吸を残して、足音も幽かに横たわる娘に近づく。
が霧散させていた視線を集め、近くなる彼をぼうと見上げた。平坦な無表情が何事かを言う前に、政宗は流れるように膝を折る。
次に来るであろう予測に、は頭の隅で固辞するべくと考えるが、結局は何も言う隙も咄嗟の余力もない。
視線は絡み合ったまま、伸びる腕を甘んじて受け入れる。

「痛むなら言えよ」

項に温い掌が這い、緩やかに下って、肩を握る。腕を支えに背を持ち上げ、急転する視界と共に重力が圧し掛かった。
これだけの動作にも息が上がる娘は、けれど歯を食い縛って耐え、呻きすらしない。間を置いて、苦痛を溶かした息を長く長く吐き出した。投げ出していた腕を胸元に当て、深呼吸を繰り返している。
申し訳ありません、とか細い声が上がった。
政宗は答えずに、傍らに畳まれたまま冷えている羽織を取り上げて渡す。

「起き上がるのは辛いか」
「…いいえ。落ち着けば、こちらのほうが楽です」

片腕で抱いた女の身体は随分と熱い。近くで見れば、いよいよ虚勢で取り繕った心身のほつれは顕著である。
着崩れの無い白妙からそれでも覗く巻かれた布。真新しく清潔な分、頻繁に取り替えられている事に創の具合が窺い知れる。
が渡された羽織をすまなさそうに礼を言って受け取り、羽織る。
大儀そうに袖を通す娘に手を貸していると、ふと互いの視線が重なった。躊躇いがちに生まれた流れに身を委ねていれば、存外近い距離である。拳一つ分先に相手の顔があり、御互いが御互いを判らぬ程度に瞠目して見つめる。黒鍔の眼帯には雲海に飛竜が泳いでいて、玉英の瞳は相変わらず潤んで光った。しかしそこに、夜を裂き貫いたあの鋭さは無い。
政宗は少しの憐憫を上らせかけたが、やがてゆっくりと霧散させるように瞬いた。それを合図として、も目を伏せ視線をかわす。
やり場のない武人の腕は躊躇いつつも傍らに落ちて、娘は何も言わないまま、十指で領を掴みなおした。間を持たせるようにして、首筋をなぞり長い髪が滑り落ちる。
敷布に揺れる黒髪の影を視界の端に収めながら、片膝を立てて座り込んだ政宗は退こうとはしなかった。ただ真直ぐにを見ている。
詰問する一閃のような鋭さではなく、つくづくと娘の肢体を眺めているのだ。
やがて、落ちるに任せていた手を政宗が取り上げて、項垂れる娘の首筋へ伸ばした。折れた襟を直してやる。

「寒くないか」

娘は答えず、代わりに毀れるような吐息を漏らす。

「わたしは平気です」

平坦な声である。

「御用を、お伺い致します」

黒瞳の視線は返らない。
覇気もなく、諦観に囚われたままの娘は自棄に中てられた口ぶりで俯く。
彼はこの様を、苦い落胆と共に見るのだ。

「…夢か」

未だひそかに揺れる黒髪の一房をゆっくりと取り上げて、引くでも、千切るでも無しに、ただゆるく握ったまま、独り言のように政宗は言う。

「夢が夢ならと、お前は全部諦めるのか」

問いかけた薄い身に反応はない。指先に巻きつけた髪先は芯まで冷えている。

「お前に訊きたい事は山ほどある。考えることだって星の数だ。長く懸念なんかしちゃいられねぇ。だがそれでも、今のお前には訊かないし、言って欲しいとも思わない。何故だか判るか」
「………」
「今のお前が、俺を納得させてくれるのか」

髪を握っていた手が動いた。一房をほどき、黒い線を辿るようにして肩口を過ぎて、俯く娘の咽喉を握る。
がうっそりと顔を上げた。
虚ろな視線は乾いていて、力なく政宗を見る。
圧迫しない五指を、気息正しくか細い脈が僅かに押し返す。

「夢を見るのもいいぜ。だがそれでもこれがお前の現だ。夢は夢だと割り切って、他は全て切り捨てるのか? 夢にだけ重きを置いて、お前はそれで満足なのか? 後悔すらしないまま、お前は全部終わらせるのか?」

鋭く吊り上がった一つ目が、いっそ射止めるように娘を刺した。

「なあ、俺を失望させてくれるなよ。誓ったんだろ。俺を罵った口は何処へ行った。俺を睨んだ目を何処へ遣った。痛みも辛さも、どれだけ酷な目に合わされても…それでも死にたくないと、お前は泣いたんじゃなかったのか……!」

段々と、政宗の声に熱が加わる。
怒鳴りこそしないのに、室内には鈍く反響して、余韻は鼓膜に深く残った。
力加減は微弱といえ、喉笛を親指が圧迫している。細い首に突き出した腕が絡まる様はさぞ猟奇じみているだろう。だがは抵抗もせずに、只視線が捉えるがまま、犬歯を見せて唸る竜を見る。
頭の中には、靄が掛かったままだった。
時間の感覚は朧だったが、恐らくかなり間の空いた今頃になって、漸くあらゆる感覚が動き出していたのだ。痺れに侵されていた指先は痙攣を止め、霞んでいた視界は深く鈍い瞬きで逃がす。
彼の言葉と、己の一連を反芻する頃には、鈍い四肢の痛みと共に、緩やかな後悔が押し寄せてきた。
何も言うべきではないのだ。何も、誰にも。目を閉じ耳を塞ぎ、口は縫って、真実は胸中に抱いたまま、独り静かに墓に入ると決めた。それに、相手は考え付く限り最も遠ざけねばならない人物である。近づいてはならない、何を思ってもならない、間違えてはいけないのだ。
これは己ではない。肉親を失って泣くも出来ない、只の憐れな青年だ。
けれど、いや、だからこそ。

「わからないんです」

焦点が合うか合わないか、瞳に映るか映らないかの色合いのまま、娘の唇がゆっくりと動く。

「最初は、厭でしたよ。悲しかったし、淋しかったし、でも、仕方ないかなと思ったんです。わたしは、あの時、母と一緒にゆくべきだったのです。それを逃れるから、余計に拗れて、苦しくなる。良い贖いだと思いました。孫次郎様に、くだらない嘘までついて、ああこれでやっと、って。……なのに」

わからないのだ。どれだけ考えても、何度やり直しても。

「何故、わたしはここで寝ているのでしょう」

ぽつりと呟いた娘は、力を抜いたままの指先で緩やかに褥を撫でる。
その手は次に翻り、急所を捕らえる竜の腕に添えられた。
今度こそ、真直ぐに政宗に向かい合う。
酷く疲れた顔だった。

「何故、わたしはまだ生きているのでしょう」

それが判らなくて、ずっと考えているのです。
が言い切れば、政宗は眇める目に更に力を入れて眉間の皺を深くした。僅か、握る指先に力が篭る。
けれど娘は歯牙にもかけず、添えた腕はそのままに、扇をそよがせるようにして、薄い瞼をゆっくりと瞬かせる。
政宗がの首筋から漸うと指を引き剥がした。発熱がうつり、無骨な掌はいまや随分と熱い。
熱はそのままに、言葉は乗せず、今度は両の掌が細い双肩を握った。
の目から、政宗の引き絞るような片目は見えない。いま目の前に広がるのは、俯いた顔を隠す髷を結わない薄茶の髪だ。
だが肉の落ちた身に堅牢な指が食い込んで、その確かな痛みが意識を外へは逃がしてくれない。
今までどこか躊躇を見せていた青年が、これほど自分に触れていることがふと少し不思議に思えた。躊躇いは肌を伝って、まるで毒に触れるような強張りがあったのに、今は直接、布を巻き込んで真摯な力を込めている。
けれど力は強いのに、まるで縋るように心許無いのだ。
はぼうと瞬いて、微動だにせぬまま俯く政宗を見る。
きつく圧迫されるせいか、二の腕から下が早くも僅かに痺れている。けれどももう口を噤もう。取り返しのつかない事を言ってしまう前に。だから何も言わないで欲しい。何も言わず、訊かずに、ただ居心地悪く並んで立っていたころは、こんな気持ちは知らなかったのだから。
だからもう、何も言わないでくれ。

「証が欲しいか」

低い声が、沈み漂う娘の思考を塞き止める。
伊達政宗はゆっくりと顔を上げて、相馬家が捨て置いた死に損ないの姫君を、真正面から見据えた。






厳冬も過ぎ、歳も明ければ、春への道は遠くとも緩やかに続いてゆく。
昨年は雪に見舞われるのが早かった分、季節の巡りも早足のようだ。
倹約のため、年賀行事は例年より簡素に執り行われ、その分あっけなく新たな年は始まりを迎えた。
諸武家はそれぞれ、年の初めに行う行事に、古来よりの伝統とは違った特色を設けている。例えばそれは奥州伊達家の連歌の儀、常陸守護佐竹家の鉄砲撃方など、風雅も実用も入り乱れの多種多様ぶりだ。
ここ、陸奥相馬家では、決まって評定始の前に弓の連射が行われていた。
丁寧に雪除けされた城内の平地にひと時の射場を据え、大人が抱えてやっとという的を拳大に見える位置にまで離して射る。破魔矢も弓も白木手束の強弓で、冬の冴え渡る陽光の元、白銀に光り眩い。
白鉢巻きに襷をかけ、一人が十矢を連投する。見事中央を射、成績の高かったものから褒美が下賜されるのだが、そこは余り規模の大きくない武家ゆえか、どこか和気藹々として、皆が皆結果を気にせずのんびりと矢を射ていた。
放ち矢が的のどこかへ当たれば上々、という雰囲気の中、一人痛いほど真剣に的に向かい合うその少年の姿はだから、逆にとても際立っていた。
まだ幼い横顔に真摯を混ぜ、引き絞った弓弦の緊張をそのまま瞳に宿して的を見る。発達しきっていない男児の腕で強弓を引くのは容易ではない。しかし今、九つの矢は既に的の中央へ吸い込まれるようにして突き立っている。知らず、周囲も静まり返り、固唾を呑んで最後の一矢の行方を見た。
その周囲の緊張すら歯牙にもかけず、少年は躊躇なく最後の矢を放った。

「――見事」

上座に座ったまま、少年の父親である相馬家現当主は朗らかに顔を綻ばせて喜ぶ。
ほっと息をついて強張りを解した嫡男が、周囲の賞賛を不器用に受け流しながら歩いてくるのを、そわそわと落ち着きなげに迎えた。

「いや、驚いたぞ。何時の間にそこまで腕を上げたのだ」
「恐れ入ります」

絹の弓籠手を解きに掛かりながら、照れたように笑う少年の顔はやっと年相応だ。抱えたままだった弓を従者に預け置き、そこでも告げられた賛辞にはにかむ。

「座学の息抜きがてら、殆ど遊び気分で手慰みに射ていたのですが、まさか上達しているなど。自分でも気づいていませんでした」
「何事も続けると様になるものだ。そうだな、次は流鏑馬でも催してみよう。いや、笠懸に的は扇として、那須与一を模してみるのも見物だろうか」
「…父上……」

うきうきと上機嫌な父親に、恥じ入る息子が呆れ混じりに待ったをかける。それを笑って手招いて、よく似た親子は並んで宴席に腰掛けた。
板敷きに端座したところで、ふと虎王丸君はきょろきょろと辺りを見回す。

「御祖父様は?」

言ってみれば、途端父親の顔が一変する。

「年中行事なんぞ五年に一度見れば十分だと、早々奥に引っ込んだ」
「ああ…」
「全く勝手な」

なるほど、と頷く少年とは違って、真面目一辺倒の父親は先ほどの上機嫌も何処へやら、途端に眉間に皺を寄せて虚空を睨む。

「まぁ、お前の姿はどこかで眺めているだろうがな。しかし折角の晴れの行事、たまには大人しく座っていようとは思わんのか」
「昨今は御忙しい身でしたから、御疲れなのでしょう。それに、この寒さは骨身に堪えます」

言外に「仕方ない」と然程拘らない息子とは違って、未だぶつぶつと父親は溢す。

「だがそれにしてもだ。もういい歳なのだから、そろそろふらふらと我を通すのは控えるべきだろうに。全く碌でもない。お前の教育にも宜しくないし、それに…」
「石頭よりよっぽどましよ」

いきなり響いた低い声にぎょっと振り向く相馬義胤の前、気配を殺して近づいた隠居がどっこいしょと腰掛けるところだった。
御祖父様、と声を掛けてくる孫には微笑み返して、自分の息子にはまるっと無視を決め込む。

「よく引けたな。行事用だが、三人張りの関弦だ。遠目にも凛々しかったぞ。さすが儂の孫だな」
「勿体無きお言葉です」
「父親に似なくて何よりだ」
「…お言葉ですが、私も虎王の年頃にはこれに参加しておりましたよ。行儀よく」

へこたれずに口を挟んだ義胤に、隠居はやっと目を向け、しかしこれ見よがしに嘆息しながら言い返す。

「お前は射的の類が下手だったな。目と鼻の先にある的でも平気で外して、それでも暢気に"中らないものだな"と続けよる。虎王の才は儂に似たのだ。喜ぶべきだろう?」
「…それでも、中身まで似られては困ります」
「それは本人次第だ」
「ですが、父上は幼少より、騎馬と剣技は奥羽随一と御聞きしています。私もそれに恥じないように精進致したく」

仲が良いのか悪いのか、傍目にはさっぱり判らない父子の応酬の間を突いて、人好い笑みの跡目が言えば途端単純と揶揄された父親は顔を綻ばせた。しかし祖父は打って変わり、賀正用の端麗な絹着に包まれた肩を呆れたように竦める。

「やれやれ、人が気を揉んでいる間に暢気なことよの」
「どういう意味です」
「お前が甘いから、儂は孫にまで憎まれ役だということだ」

帯に挟み込んだ扇をぐっと挿し直して、座ったばかりだというのにまたすぐ身軽に立ち上がる。行事は既に終息を迎え、採点役が改めて順位を算段している頃合だった。十矢全てを的中に納めた跡目の上位は間違えようがなく、隠居は笑んで孫を促して立ち上がらせる。
実齢にそぐわない瀟洒な身のこなしを目で追う息子に対しては、含んだ視線で黙らせた。

「あとの雑務は儂が担おう。お前はお前で、しゃんとして仕事をしろ」

言い捨てて語尾は孫に視線を移し、おいでと少年を手招いて去る。嫡男も不思議そうに祖父を見たが、やがては父親に礼をして祖父のあとを追った。
あとに残された義胤は暫し、身軽に去り行く隠居の背を見る。新年の朗らかさに湧く家臣団にすら、ふと一瞬の緊張を与えるのだから、その辣腕ぶりは疑いようもない。
賀正行事に緩んでいた気持ちの一端が、途端きつく紐で縛られたように引き絞られた。
なにか、良からぬことでもあったと。
その考えを肯定するように、背後の屋から声があった。
振り向けば、衣を捌く絹擦れも高く、側仕えが跪く。

「どうした」
「早馬の使者が御到着でございます。相馬家御当主へ急ぎ申し上げたき儀があると」

義胤は躊躇なく眉を顰めた。
賀正である。近隣の武家はどこも年賀の行事に見舞われ、今は暗黙の了解で休戦期間のはずなのだ。早馬であれ、使者の口上とはなんと無粋なことだろう。何が起因かは知らないが、それほど急く事態が気に食わない。
家臣はその不機嫌を察知したか、はたまた最初から言うつもりだったのか、唇を湿らしてこう続ける。

「不躾はご尤もでござりまする。ゆえに大殿が一度追い返そうとしたのですが、申す内容が内容なだけに、思い留まられたのです。相馬家現当主は殿、お決めになるのもまた然りと」

――あの父親が。
瞠目する義胤が黙ったままでいれば、使者は暫く間を開けたあと、恐る恐ると一通の真白い書状を捧げ持った。

「一先ずは別室に御通ししております。如何致しましょう」
「一人なのか?」
「供回りを二人ほど御付けのようですが、使者殿は」
「これは」
「此度の言上の全てだと。…お読みになれば、必ずお会いになる筈だとも申しておりました」
「大した自信だな。どこのどいつだ」

まぁ、誰であれ、正月早々走り回るとは気の毒に。
折り目正しく、染み一つない靭皮の表紙にさっと目を通し、頓着なく開いた。
訝りながら取り上げる当主の耳に、傅く家臣の声が続いた。

「伊達家が軍師、片倉殿にござります」

手元から視線を滑らせる当主に向かい、海老原家嫡子はどこか苦さと懐かしみを混ぜた声で今一つ、と告げた。

「姫様は、ご無事であらせられるとのこと」






冷静になれば、既に決着はついていたのだ。
そもそもの兵力からして、伊達家と畠山家では比べるべくもない。それを激情に任せて機を熟さずぶつかった所為で、話が拗れただけなのだ。
過ぎたことは詮無きこと。しかし何より特筆すべきは、これに付け入る周囲の老獪さだ。よくもまあこれほどと何かにつけてこじつけて結託し、邪魔者を排除しようとする。喉元を過ぎれば呆れと憤りを通り越して、いっそ小気味よいほどの抜け目のなさである。
しかしこれも、要である佐竹氏がまた計略によって退くしか出来ないとなると、いよいよまるで笑い話のようである。
右翼を担っていた芦名氏も、事実上は佐竹の一派である。大本が足止めを食えば迂闊に動くことはならなくなり、残りは足並みの揃わない反伊達の徒である。
思惑に思惑が絡まって、いささか遠回りも、余りにも惨い犠牲も出したが、同時に容易には得難きものを得る。皮肉な話だが、これもまた詮無い。
正月を十日ほど過ぎた頃、伊達家で行われた評定始は、本城米沢ではなく逗留したままである小浜城内にて行われた。
立地条件も施策上さることながら、伊達家当主は存外この一風変わった城の趣を気に入ったようで、賀正の行事もこの慣れぬ城で執り行われたのだ。
喪中ゆえに、専売特許のような派手さは聊か欠いた催しとなったが、生きて新年を迎えたという安堵がそれを補った。例年通り順序よくことは運ばれつつ、流石にこれから一年の軍事如何の粗方を取り決める評定ともなると緊張が走る。
ところがこの話し合いでの話題といえば、中央や以西の情勢と、身罷った先代を奉る寺の建立について。この二つだけに終わった。

「…拍子抜け」
「何がだ?」
「わ」

独り言に返事があって、返り支度を進めていた成実は身を竦めて振り仰いだ。果たせるかな響いた声の通り、鬼庭綱元が左の掌で右肩を揉みながらおっとりと歩み寄るところである。
人が悪いと唇を尖らせる成実に笑い返しながら、この度めでたく家督を継ぎ、他を差し置いて奉行に就任した男は長めに息を吐いて続きを促す。

「殿の、お前への評価が気に入らなかったのか? 言っておくがあれは俺の所為だぞ」
「お前の所為かよ」
「去年の無理が祟って蔵は埃も無いほどだ。削れるものは骨でも削らねばな」
「あっそ。まぁ別に良いけどさ…ていうか違うよ。そんな難しいことじゃなくて、もっと単純な話だ」
「ほう?」
「随分あっさりしたもんだと思ってね」

溜息混じりに言い捨てて、少ない荷物を担ぐと、さっさと踵を返して厩に向かう。何のことは無い、居城に引き揚げるのだ。御当主じきじきに暫くはゆっくりすれば良いとの言葉を頂いた。建前でも何でも、頂けるものは頂くに限る。
そのまま別れるかと思ったが、綱元は成実のあとを一拍を置いて追いかける。
寒風に薫煙が混じって、気温は兎も角風情は早くも初春の名に相応しい。現に空は晴れていて、脇に避けられ堆く積もれた雪塊を端から溶かしていた。まだ高い位置にある陽が射して、溜まる雫をゆらゆらと泳がせている。
成実が飼馬のもとへ歩み寄れば、途端主人を嗅ぎつけた獣は前足を踏み鳴らして歓待した。走れることが嬉しいのだろう。厩舎の番士に轡やら何やらの用意を促しながら鼻面を叩けば、荒い息を噴出して勢いよく応える。

「肩透かしを食らったか」

これから下館に下がった政宗を追うのだろう。
ゆく素振りを見せながらもからかい混じりに足を止める綱元を振り仰いで、成実はぎろりと己の二倍は生きている男を睨めつけた。

「軍議だ、って呼び出されて、いざ来てみりゃ都と墓の話だけ。去年あれだけ散々煽っといていきなり泰然とされちゃ、誰だって驚くさ」
「ははは、お前には出来ないだろう」
「無理」
「それが、我等が御殿の恐い所だ。あの方は戦のたびに強くなるな。いや、恐い恐い」

今度は手刀を模した右手で左肩を叩き、何が面白いのか、睨まれた男は目尻に皺を寄せて朗らかに笑う。

「いいじゃないか、中休みと思って満喫すれば。俺も、小十郎が戻ったらしいから、あいつと少し話をしたら明朝には発つつもりだ。殿もあと二三日で米沢に戻るだろうし…」
「それ」

びっと人差し指を立て、不機嫌な顔のまま成実が割り込む。
綱元が不思議そうに首をかしげた。

「それ?」
「そう」
「何のことだ」

促す綱元にまるきり不満げな顔を押し隠そうともせず、伊達成実は腰に手を当ててぶつくさと吐露した。

「小十郎が帰ってきたんでしょ。じゃあもういいじゃん。俺、ちゃんのお見舞いに行きたいんだよね」

それをあの我侭殿様が、と聊か不遜なことを宣うも、綱元はこれにもああ成る程、とだけ頷いて、やがて噴出すように笑って返した。

「成る程、お前の不機嫌の元は真実それか」
「…語弊があるけどね。まあ、そう」
「なら、俺にはどうすることも出来んな」

せいぜい頑張れよ、とだけ言って、得体の知れない新奉行はさっさと下館に向けて歩を進める。
えー! と成実が抗議の声を上げるも、返ってくるのは肩越しにゆらりと振られる掌の往復、そしてやはり笑い声。
残された青年は暫く腹立ちのままに男が消えた先を見つめていたが、やがてアホくさ、と肩を竦めて馬に向き直った。
既に用意は終わっていて、番士が苦笑しながら手綱を携えている。彼も笑って同じ年頃の相手を小突き、さっさと愛馬に跨った。
年が明けた。少し休んだら、また忙しくなる。しかしもう空は澄んでいるのだ。






「無理をさせたな」
「何時もの事ですから」

正月早々から走り回らせたのだ。自分なりに悪いと思っての労いに、しかし傅役はしらっと言い返した。
その口元が笑みの形を刻んでいるのを認めて、政宗もまた苦笑する。

「I'm in luck today. お前の機嫌が良いようで、俺も一安心だよ」
「そうお思いになるのなら、日頃から私の胃を慮って下さると有難いですね」
「You've got a good sense of humor.」

流れるように異国語を紡いで、肯定も否定もはぐらかす主君に向かって、小十郎は慣れたようにやれやれと苦笑した。
次いで懐から書状を取り出して、脇息に凭れ緩慢に寛いでいた政宗に捧げ渡す。

「義胤公よりの返書です」
「へぇ、もう寄越したか。随分素直なんだな」

もっともったいぶるかと思ったのに、と政宗は笑いながら煙管を握るとは別の手を伸ばし、真白い書状を受け取った。
封は雪地に霜を降らせた瀟洒な設えだが、幾許の執着も見せずに開いては、ぽいと脇へ投げ捨てる。
片手で器用に折り畳まれた紙片を開いて、竜の目は流れるような仕草で流麗な文字を追った。

「隠居のほうは何も言わなかったのか」

小十郎へは一瞥も寄越さず、政宗は手元の書簡を睨み付けたまま問うた。
家臣は居住まいを正しつつ、この問いに是と頷く。

「訪問の折、追い返されそうにはなりましたが、結局私と御会い下さったのは義胤公御一人でした」
「そりゃ怖ぇな。どうせまたなんか裏で良からぬ事でも企んでるんだぜ」
「十中八九そうでしょう。書状にはなんと?」
「こっちの条件は全部呑むそうだ」

軽く言った政宗が早くも適当に紙片を畳み直すのを見つめながら、小十郎は少し含んだ笑みで頷いた。

「この戦は、これで、あなた様の勝ちにござりまするな」
「………」

政宗は一時ひたと小十郎を見たが、次の瞬間には"独眼竜"の笑みで以って彼の揶揄に応える。

「毒の血を飲んで膿を出し切ったのさ」
「それにしては、聊か犠牲が多うござります」
「そうだな。どうやら俺は寝ても覚めても地獄行きのようだ。怖気づいたか?」

小十郎は嘆息する。

「何時もの事でございましょう」

侮蔑も畏怖も、追い風だ。

「ですがお忘れ下さりますな。あれは戒め、あれは苦汁。今生に二度、あってはならぬことです」

けれど強ければ背を打ち、瀬戸際では崖下へ墜落する要因にもなりうる。
小十郎の言葉に、政宗はただ挑戦的に鼻を鳴らして、畳んだ紙片も投げ遣った。

「新年に持ち越しちゃならねぇもの、余分な銭と人の業、だろ」
「…全く」

事は何処までも重い筈なのに、重責を軽妙な軽口でかわす青年にすっかり脱力して、十も上の男は笑い含みに口を噤んだ。
ささやかな勝利に満足する彼が、手元の煙管に唇を寄せる。瑠璃に鳳と凰が刻まれた胴体が襖を通す陽の光に照って、清澄な波紋を寄越した。

「私個人は、殿が執着された事が嬉しいですよ」

政宗の視線が返る前に、真向かう男は「独り言です」と後手を封じておき、切れ長の眼をすっと細めて優しく続ける。

「物憂げに見目だけを愛でていた方が、ひとものを長く見つめる遣る瀬無さをお知りになった。それはとても、悦ばしい事です」

まるで何か眩しいものでも見るかのような視線にも、政宗は逸らすことなくじっと見つめ返して、やがて上を向きふっと色づいた吐息を吐き出した。
広がっては立ち消えてゆく仄かな白煙を見送り、煙管を銜えたままの唇はゆったりとした弧を描く。

「こればっかりは、お前にもわかんねぇだろうな」

隻眼を細めて笑う竜の瞳は穏やかだが、逆にとても見慣れない。傅役の目は指で挟んだ豪奢な粋物をすいすいと動かすことでかわして、それ以上を拭おうとはしなかった。
薫り高い煙を胸一杯に吸う、吐き出すを何度か繰り返して、じき政宗は「さて」と呟き、煙管を置いてゆらりと立ち上がる。

「そんじゃま、俺もちょっくら出てくるかね」

何処へ、とは言わない。
小十郎は静かに笑んで政宗を見る。

「そうなさいませ。私は綱元殿をお待ちして、それから戻ることに致します」
「ああ、そうだ。まだあいつが残ってたな。まぁなんでも器用にこなすやつだ。すぐ片付けて来るだろ」
「不足は無いと承知しておりますが、役務の引継ぎは滞りなく?」
「中々恐い倹約家だぜありゃ。俺は金遣いが荒いと正月早々絞められた」
「それはようござりまする」

小十郎が大きく笑うのに、主君は肩を竦めるに留めて、改めて頭を下げ見送る彼の横をすたすたと通り過ぎる。
だが、そのまま次の間に続く襖障子を開けて一歩踏み出したところで、未だ笑いに包まれた傅役の声が追いかけてきた。

「そういえば、義胤公が少し妙なことを仰っておりましたね」

前に進みかけた政宗の足がピタリと止まる。
背後の男を振り返れば、優男は首を傾げながら仄かに笑っている。
ただ、目は笑っていない。

「私では判りかねましたので、その場は濁しておきました。典医からも何も聞かされておりませんでしたし。まぁ、今まさに宿っていると言うなら話は別ですからね」
「…何の話だ」

一閃の眼光は鋭いのに、厭な予感に頬を引き攣らせる所為か、その迫力は半減している。
だから小十郎は臆するどころか、とても歓迎するようにその視線を受け止めて、にっこりと笑うのだ。

「腹の子も大事無く育っているか、と。御心当たりがおありで?」

今度こそ、年の瀬から休む間もなかった男の、ささやかな復讐が執行された。







これは、何の冗談なのだろう。
がふう、と息を吐けば、ほんのりと白きが部屋の中に浮かぶ。
火鉢は相変わらず焼けた炭を抱いていたが、次の間にも周囲にも、誰もいないのを良いことに、ただ襖障子も敷戸も開け放って、見慣れない庭景色を見ているのである。
手入れの行き届いた白梅に、まだ味気ない山茱萸、一抱えもある庭石。それぞれに、積雪はほっこりと凝っている。
合間合間から見える空は、まるで藍を溶いたような濃い青で、その所為か厳冬の寒気も和らいでいる。
十日程前に、日当たりが良いからとこの部屋に移ってからは、ずっとこんな天気である。
日がな一日、ぼんやりと空の移り変わりを眺めているだけの毎日は、少し不思慮な気がする。
自然、口元は自嘲気味な吐息を漏らしていた。
深手を負った身は一度底辺まで落ちるに落ちて、あとはゆっくりと浮上していった。
元々、薬が利き難い分頑丈な性質である。衰弱は療養と滋養を重ねれば解決し、身体が落ち着くと冷静さも取り戻す。
そして、現状を省みては首を捻るばかりなのだ。
意識をすれば今でも思い出す。背筋を這い上がるような恐ろしい冷気に、やわらかく殺されてゆく感覚。
あの時、自分は確かに故郷全てに別れを告げて、しっかりと幕を引いたはずなのだ。
にもかかわらず、相変わらず心臓は暢気に脈打ち、五体は元々欠けていた分を除いて、健全である。
そして自分が今、生きて此処に居るということは勿論、もう一つ誤算があるのだ。
自然、もう何度目か判らない溜息が漏れる。

(…何にしたって、自分の莫迦さ加減だけが身に染みたわ。素晴らしい作戦。最高)

ぼんやりと思う頭の片隅とは反対の部分が、いつか擲たれた言葉の断片を引っ張り起こす。
それがまた憂鬱の種で、意味が判らず気持ちが悪くて、心は一向に晴れない。
禁固とはいかないまでも外出は禁じられ、誰にも会わず何の情報も得られないまま、ただ戦々恐々とした日々を過ごすしかなかった。
持て余す時間は回復と思考に費やされて、傷は癒えたが気鬱は増す一方。
おまけにこの城主は「同じ轍は二度踏まない」を今年の抱負としているのか、余人を彼女の側に置くことを禁じたのである。
もちろん、身の回りの世話人や医家など、不自由の無い程度に必要な最低限の人員は派遣されていたものの、彼らは本当に「何も」知らないのだ。
雇われて日が浅いのか、はたまたさほど興味が無いのか、自国や周辺の戦や国政などほとほと感心が無い様子で、が話題を振っても「さあ」とか、「それよりも」とかわされるか、「ご近所での噂では」という程度の素っ頓狂な情報しか渡してくれない。
これが演技なら天晴れな三枚舌だが、口に上る話題の大方を聞いている内に、それは無いだろうとは勝手に納得してしまった。
つまり、あまりにも平和なのだ。この間は大根が安かったという話だけでいつの間にか日が暮れていた。
成る程徹底している。なまじ洗礼された人間の世話になっていれば、厭でも耳年増になるということをよく理解されたのだ。
確かに、城に居る間のの情報源は主に奉公人だった。彼らは驚くほど色んなことを知っていて、たとえ憶測でも中々に的を得ていて面白い。秘密は大事なものほど漏れるとはよく言ったもので、籠の鳥でもある程度を把握するのに然程苦労は要らなかったのだ。
それが今は何も判らない。
自分が何も知らない間にも、物事は留まることなく進んでいるというのにだ。疎外感に似た焦燥は日ごと増してゆくばかり。
何より、彼は耳を疑う言葉をに残してから去ったのだ。
あの男は一体、何を考えているのだろう。
全く判らない。
政宗は、まだ意識も覚束ず、重ねての衝撃に息も忘れたを残して、静かに姿を消した。
あれからもう一月ほど、答えの出ない無為な日々を送っている。

!!」

突然大声で己の名を呼んだ声は、明らかに怒気を含んでいて、何よりも一番恐れていた声であった。
びく、と竦んだ身が咄嗟に振り向くより早く、神速の腕が伸びて華奢な双肩を掴むと、問答無用で半回転。
目の前に、明らかな怒気に揺れる鬼より恐い隻眼がある。

「勝手をするなと何度言やぁわかんだよお前は、ぁあ? そんなに外が好きなら仕舞いにゃ放り出すぞ!」

最悪だ。
今まさに考えていた悪夢が、現実となって現れたようだ。
しかし何故こんなに怒っているのだろう。悪鬼も裸足で逃げ出す形相で怒れる独眼竜は、動揺で声も出ない娘が慌てて居住まいを正している内に、ふと食指を伸ばして頬に触れる。
指先で掠めるように温度を確かめてから、彼は軽く舌打ちを零した。

「外気が吸いたいなら、せめて加減しろ。手前の身体に害になってりゃ、元も子もないだろ」

この言に、の言葉ははっきりと返らなかった。
撫でられた頬に少し目を見張ったきり、曖昧に頷いて、視線は少し他所を見る。
政宗は日々に忙殺されつつもの様子を少なからず耳にしていたが、彼女のほうは逆だ。
自然、警戒と嫌悪が体中を取り巻く。
その、彼女の異変に目敏く気付いて、政宗は屈みかけた動きを止めた。
見下ろして、少しだけ逡巡を見せたが、やがて動く。

「…傷が平気なら、少し歩くか」

不明確で、端的な言い方だったが、には効果があった。
沈みかけていた頭を持ち上げて、高いところにある隻眼を見る。
見返しながら、彼は、手を差し出した。

「話がある」







回遊路は丁寧に雪除けされていて、目映いばかりの日光に残りの雪もじわじわと融け始めていた。
水に戻った雪結晶が目端で目映く輝く中、さくりさくりと静かな足音が響く。
前を行く政宗に遅れて三歩、分厚く着せ掛けられたがのろのろと続く。衣服の重みで歩きにくそうな彼女を慮って、彼の歩みはごくゆっくりとしたもので、時折振り返っては、足元の覚束無い彼女を待つ。外に出て時間ばかりが経過したが、進んだ距離はそう大したものではなかった。
塀側に振袖柳が植えられて、韓紅を透かした枝木と果実が積もった白雪に映えている。段を作った手前は冬至梅で、まだ真綿のような花を沢山に綻ばせている。冬が早かった分開花も例年より前倒しだったが、凛とした白花弁を寒気に添えるこの花がまだ瑞々しい内は、春の訪れも真には遠い。
ふう、と置くひと呼吸も、同じような色で景色の中を舞い上がるのだ。
冷たい空気は細やかな粉を吸ったときのように柔く肺を撫でて、また外に出てゆく。
凛とした庭園は二人きり、他所の気配は無かった。
暫し無言で歩いて、やがて、政宗がふと立ち止まった。
気配を察しても止まり、その先を伺い見れば、花崗岩の敷石が二又に分かれている。道筋をなぞる様に低く揃えられた侘助が群生して、揃った色を見せていた。
何事かを逡巡して、じき彼は肩越しに振り返った。

「寒くないか」
「はい」

緩やかに頷くは、三歩後でゆったりと微笑んでいる。視線を辺りに遣って、見慣れない庭園を撫でるように愛でていた。
草木が好きなのか、それとも外気が好きなのか。恐らく両方なのだろう。
政宗は少し見つめてから、やがて倣うように周囲に視線を投げ放った。
つぶさに見て取ると、計算され手入れされた観葉は実にさまざまな表情を見せている。
葉裏一つ、花弁一つにも、それぞれに趣があって、きちんと理解されたうえで植栽されているのだ。壮観だ。

「何か、久しぶりだな。お前とこうして庭木を見るのも」

思わず呟けば、零すような声である。
は目と共に頷いた。

「何度かご一緒致しましたよね。あの鯉も元気でしょうか」
「こっちに来て一年くらいか」
「ええ。……実際は、とても長く感じましたけれど」

首筋にきつく合わされた防寒布を指で撫でながら、今度こそ、はまっすぐに政宗を見た。
凍寒に透き通る頬に幾筋か黒髪が落ちかかって、墨と玉の対比に雪の淡青が映えている。

「お話とは」

染み入るような黒瞳である。
彼も、正面きってこの眸を見た。
今こそ話をしなければならない。寸断し先延ばしにされた結論のために。
政宗は何度か平素に呼吸して、やがて静かに口を動かした。

「…相馬からの返書があった。俺の提案に、向こうも承知したよ」

まっすぐな隻眼も、その声も、が幽かに驚くほど低く、穏やかだった。

「離縁だ」

存外軽妙な調子で政宗が言い切った。

「俺とお前は他人に戻った。伊達と相馬も敵同士、元鞘だ。今日からお前は」

彼は堪り兼ねたように一度深く呼吸をして、やがてやはり重みを取り去った声で言った。

「伊達の人質になる」

の両の目は少し水気を湛えたまま、苦りきった表情に歪んだ。
死にぞこないのに政宗が言い捨てたこと。それがこの馬鹿げた顛末だった。
提案だけを口にして、理由も目的も明かされぬまま、此処まできてしまった。
まさか本気だとも、思えなかった。
何も耳に入らない日々に不安はあったが、一方であの家が、あの人が、そんな不利に頷くとは思えず、無理に納得していた部分もある。
それがよもや、現実になるとは。

「あんな事…、まさか、本当に」

苦りきった声で言えば、政宗は至極真っ当に頷く。

「ああ」
「何故」
「使えるからさ」

今度、政宗からは、八重歯を覗かせる皮肉な笑みが寄越される。

「これもさっき決まったんだがな。二本松が落ちる。ガキの後見人がこっちの条件に応じるとよ。奥州探題の末裔もこれで仕舞いだ」

歪んだままの視線を交錯させたまま、政宗は投げ出していた腕を組んで、続ける。

「俺が出した条件は二つだ。一つが、本丸以外、城はそのまま明け渡す事。もう一つが、畠山郎党、以後一切の奥州踏み入りを禁ずる事。これは呑まれた。だが当然、俺にゃよっぽど懲りたらしい。やつら、仲介役を立ててくれとに泣きついてきやがった」

小手森城での虐殺が功を奏して、伊達政宗の名は天下に知られることとなった。良い意味でも、悪い意味でも、その名を聞けば誰もが畏怖して、誰もが件の惨たらしい鏖殺に思いを馳せる。特にその効果は奥羽大名には絶大であり、自信の無いものはその名を訊くだけで麾下へ降るようになった。
弔い合戦と称して、二本松へと無理な合戦を推し進めたのだ。降伏するとて、政宗の怒りと、これまでの所業を伺って、誰が身の安全を信じれよう。
この当然の揶揄に対しても、名実共に奥州王になりつつある男は、軽く笑って返しただけである。

「仕様がねぇから、これは俺が折れてやった。仲立ちは小高の相馬義胤だ」

初めて、の明眸が見開かれた。

「恩を売るのさ」

はじき、まあるく見開いた目をゆったりと眇めて、眉間にうっすらと刻んだ皺を消さず、難しい顔で政宗から視線を逸らした。
一を聞いて十を知る彼女だ。端的な政宗の言葉で、粗方を悟ってしまったのだろう。
街道七家の例に漏れず、二本松城主畠山家と相馬家も、遠からず近からず誼のある間柄である。恐らくだが、件の戦最中にも、婚姻の関係を存じていた畠山家は、何度か伊達への取次ぎを頼んだ事もあっただろう。
しかし、実際は適えられる事無く、蜘蛛の糸のように薄い縁は、切れず、繋がりもせず、宙に浮いたままで放置されたのだ。
そして当たり前だが、この度の相馬家のどっちつかずの一人勝ちは、諸家から快く思われていないのである。
上杉と結託して北条を使い、要の佐竹を抑えた事の真相は、芦名あたりまでは聞き及ぶ事となっているだろう。
以西からの脅威に警戒しなければならないために、今日明日どうこうという影響は無いが、長く腐らせると厄介な火種になりかねない恨みだ。
それを、伊達政宗が払拭してやろうというのだ。
二本松国王丸は落城後、必ず芦名家を頼って落ち延びるだろう。
芦名家は不幸が続き、跡目以外駒が無い。悲運の少年王は教育次第で有能な後詰になるし、血統としても教養としても申し分ない。
相馬家にとっては、後の重鎮の命を救ったとして、恨み辛みを拭わせる、少なくともの一手になるのだ。
伊達政宗にとっては、相馬へ諸家への面子を保たせてやったことになる。余計な横槍への嫌味を含み、擦り付けられた恩へは泥をかけて突っ返して、舐められた行動への派手な牽制にもなるのだ。
結局は血縁、結局は親類。それに絡め取られたままである諸家を、この男は嘲笑い、軽く往なして、好い様に片付けるのだ。卑怯は名に任せて、無を有に変えて、絶対に不利は残さない。
二本松は、遅かれ早かれ伊達政宗が落とすのだろうと思っていた。しかしそこに表裏者の手を引っ張り出すなどとは思いもよらなかった。
こんな博打事、普通はしない。それも外れた目に続けて賭ける大博打なんて。
あらゆる想定はしていたつもりだ。しかしこの男はその遥か上を行く。
は内心で溜息を吐いて、唇を噛んだ。
それを見計らっていたかのように、政宗が続ける。

「元々、奴が手前で撒いた種だしな。あいつらが教えてくれたことでもある。俺から言い出したが、畠山からの催促もあったんだろ。これも承知したぜ」
「………」
「どうだ、こんな寛大な殿様他に居ないだろ。一度頷いたんだ、せいぜい働いてくれなきゃな。でなきゃ後々困るのは奴らだろうぜ。俺と違って、有象無象を抜けられない連中だからな」

が困り果てた顔を雪野に彷徨わせた。
こうして鮮やかな表情を顕にした娘は、常の印象よりいくつも幼く見える。行く宛てもわからず佇む迷子のようだ。
事実、その心境なのだろう。
離縁が故の人質。そんなもの、聞いた事がない。
前者は、判らないでもない。寧ろ当然だ。相手方を裏切った時点で和議も血縁も厄介種でしかない。
送り返すのは当然なのだ。たとえその先に待つのが一つしかなくても。
けれど人質は、実家や周囲にまで影響がある人物を手元に置くからこそ、効果を発揮するのではないのか。
女のこの身で、そんな価値があるわけがない。
ならば何故―――

「勘違いすんなよ」

静かなのに鋭い声が響いて、ははっと政宗を見つめなおした。

「お前は、奴らが行った勝手の仕置きで俺の元に置く。今度また舐めた真似をして、俺の邪魔をしないように。お前を生かすのは見せしめだ。…そう思え」

真正面から娘の顔を見下ろして、竜は殺伐とした声で、静かに唸る。

「いいか、よく聞け。俺はいずれ相馬を下す。ここまで俺を虚仮にした一族郎党許すわけにはいかねぇ。お前を此処に遣った隠居を殺す。お前を此処に返した当主も殺す。だからお前は俺を許すな。憎んで恨んで、いつか俺を殺すまで」

それまでは、生きてろ。
が面を真白に染め抜いて瞠目した。政宗はそんな彼女を苛烈に睨んだまま微動だにしない。
きっと、この娘は、何を言っても喜びなどしないのだ。
居たくも無いのにそこに居て、なまじ血縁を作るから付け込まれる。そして重責を担い、苦しむのだ。それから生きて逃れるのに、この地位と案はまたとない。
けれど、決して名案ではないのだ。
名目であれ、政宗と正式な婚姻を交わしていたのはだけだ。妾とはいえ立場は軽くなく、劣る家格とはいえそうそう手出しも出来ない。けれどこの度離縁となれば、その後ろ盾が全て消滅するのだ。
只の名目が戦国にあってどれほどの価値があるか。馬鹿げたことだと誰もが腹の中で笑いながら、流布する帝王学ゆえに破ることは適わない。
只の人質、そして女。扱いを持て余せば悪手は其処此処に蔓延るだろう。だから特に状況があやふやだった今まで、ひっそりと城下端の屋敷に追いやって、誰にも合わせないように閉じ込めていた。
何故。そう問われて、今正直に言って、何になると言うのだ。
結局、どう足掻いたってこの線引きは超えられないのだ。血でも宿命でもない、何よりも己が矜持が許さないから、こんな言葉でしか、死ぬなと言えない。けれど初めて言った気がする。
そうだ、死んで欲しくない。
何故かなんて、もう判りきっている。
の薄い瞼は一度瞬き、やがて向かう熱に耐え切れず視線が下る。間を風だけが縫って過ぎ、解れ毛が唇を叩いて、刹那言葉の邪魔をした。
そして政宗の言葉は続く。

「お前の事だ。俺を助けたのは何か考えがあるんだろうな。きっと、ただ恩を乞おうなんて、そんな小さな思惑じゃぁ無いんだろう。お前が生きてりゃ不都合だらけだ。相馬はまたお前を出汁に腹を探る。周囲の連中はお前を餌に謀略を練る。……それでも、俺はお前を殺さない」

こちらを見ないの髪に、政宗の手が伸び、指先が毛先だけをふわりと絡める。
感触に攫われてまた目を上げた娘を静かに見下ろして、政宗は落ち着ききった顔と、声で、言うのだ。

「意味は、わかるな」

彼女は答えない。
いつの間にか淡く紅葉した頬を放置して、は昂ぶった感情を押し殺すかのように、暫く無言で俯いていた。
やがて、一際深く息を吐く。
その仕草は、いつもであれば冷静さを取り戻す儀式のようなもの。
けれどもう、感情を全て押し殺してしまうには遅すぎた。長く共に居すぎた。知って、気づいて、馴染んでしまったのだ。
決心を躊躇するほどに。

「わたし……、一度決めてしまった」

独白のように、懺悔のように、娘はポツリと呟いた。

「だから、あなたに何も出来ない。応えない。従わない。…でも、憎くなんてない」

憎いはずがない。そんなはずがない。憎しみという感情がどれほど危ういか、知っている。執着はやがて生まれ変わるのだ。消すも度すも御しがたい、燃えるばかりの感情へと。
握っていたのか、縋っていたのか。髪先を緩く絡めて止まるままの政宗の手を、今度はが取る。
いつも熱を持っていた筈の掌は、大きさだけをそのままに、今は温度を失くしている。
力を込めては握れずに、けれども両手を重ねて、瞳は見れずに、一度息を吸った。

「あの夜の、あれは、わたしが、わたしに、わたし自身に向かって言ったんです。本気なんかじゃ、無かったんですよ。……生きててくださって、よかった。酷いこと言ってごめんなさい」

どうか、誰も来ないように。誰も見ないように。
目を閉じ耳を塞ぎ、口は縫って、真実は胸中に抱いたまま、独り静かに墓に入るのだ。
それまで、それでも。
それでも生きるなら。

「…助けてくれて、ありがとう」

震えた声が言い終わる前に、重ねていた手が強く握り返されて引かれる。もう一本鍛えられた腕が伸びたら、薄い肩を掴んで巻き込んだ。
華奢な娘の身が逞しい青年の胸に抱き込まれ、頼りない背と腰に固い腕は回る。力が強い。背骨が軋む。呼吸が苦しい。首筋に埋まる額の熱はあっという間に一つになる。
嗅ぎ慣れない香の匂い。波打つ鼓動。知らない感触。胸が疼いた。いつの間にか頬を伝う熱いものは何処から来るのだろう。でも仕方ない。きっと、これしかないのだ。
は疼く抵抗を殺し、されるまま一切の力を弛緩させて、ただ静かに目を閉じた。






振り返れば、年の頃も近い二人がなにやら性急に話し込んでいるのが見える。
跪いた片方が矢継ぎ早に口を動かすのを、もう片方はふんふんと頷いては神妙な顔で考え込み、だがすぐには立ち上がって歩き様に返答を始めた。
―――やはり会うか。
一連を眺めてまず思った感想はそれだ。

「武家は休まる間がありません」

傍らで凛とした幼い声が響いたので、漸く隠居は孫と連れ立っていることを思い出し振り返った。
少しだけ垣間見る心算だったが、存外長く置いてけぼりを食らわせた跡目を見やっていたのだろう。
目線を下げれば少し苦笑する若君の姿。三代続きよく似た顔だが、中身は素直にはいかないらしい。

「同席されないのですか? 父上のあの御様子じゃ、また何処ぞからの早馬でも押しかけてきたのでしょう」
「放っておけばいい。何を言おうがどうせ儂の言う事はみな、耳に煩い小言に化けよるのだと」

言い切れば途端孫がくすりと笑うので、隠居は不思議に怪訝を混ぜて首を傾げる。

「何が可笑しい」
「引っ掻き回すのに後片付けはしない、御祖父様の悪い癖です」
「ほう。どういう意味だ」
「大方先ほどの退席時に、粗方の顛末を聞いているのでしょう?」

まだまだ稚児にも等しいと思っていたが、存外軽妙に皮肉を言うのに、流石の老獪な武人も聊か眉を上げ血を分けた子供を見た。
成る程、選ぶのは本人といえ、遺伝とは恐ろしいものである。この口ぶりは紛れも無く、途方もなくよく知るものに似ている。
何も返さないままでいれば、少年はいかにも楽しげな表情で一度だけニカと笑った。
また子供に罵られる種が増えたなと、少しも堪えていないくせに考えて、相馬孫次郎盛胤はおっとりと年明けの高揚に酔う周囲の喧騒に気を紛らわせた。
根は糞がつくほど生真面目なのに、どこか朗らかで詰の甘い気質は宴席にもその雰囲気がにじみ出る。
彼はこれが好きだった。馴染めないからこそ、好ましいのだ。

「…一つ、お伺いしてもよろしいですか」

少年がポツリと漏らした。
改めて見遣れば、幼い顔は打って変わって固く引き絞られている。
盛胤は不思議に思いながらも促した。

「何だ」
は死んだのでしょうか」

じっと見下ろす盛胤の前、虎王丸は大人びた雰囲気はどこかへ投げやって、目も上げずに地面を睨む。

「こんなこと…父上には、到底お伺いできません。でも御祖父様なら、憶測でも率直に伝えてくださると思って」
「まぁ、儂は血腥いからな」
「そん…っ、ならばやはり…!」

存外声を張り上げた己を即座に自覚し、少年ははっと身を竦めて周囲を伺った。
幸い、酒の入ったむくつけき男どもは豪快に笑い合っていて、少しの騒音くらい気に留めようともしない。
盛種は口端に笑みを混ぜたままで幾分周囲を伺ったが、やがて肩を竦めて孫を見据えた。

「お前はどう思うのだ」
「…え」
「生きていると思うか、それとも死んでいると思うか」

後者の言葉に顔を歪めつつも、虎王は俯かずに熟考した。
やがて、噛み締めた唇から出る声は幼いながら低い。

「……わかりません」

盛胤は薄く笑んだままである。
それから少年は少し遠くを見て、まるで藍を溶いたほど濃い空を視界に入れる。

「でも、約束しました。…死んでも死ぬなと」
「そうか。ならば生きて居るよ」

やけにあっさりと頷いた男は少年が振り仰ぐ前に、大きな掌でまだまだ小さい孫の頭を乱雑に撫でた。
ゆらゆらと揺れる頭を必死に繋ぎとめながら、虎王ははぐらかされてなるものかと引き続き祖父に食いつく。

「っ真実、そう思われますか!?」
「ああ。儂はそう信じる」
「…何故?」

黒麒の鬣の如く鋼に光る髪を漉き、いっそ潔いまでの断言に訝る孫を見て、壮齢の武人は鷹の目を細め、笑った。

「あれは、約束したら必ず守るのよ」








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 BGM:and A(Radiohead) ,Go Action,カサヴァテス(EGO-WRAPPIN'),Wiper(Sketch show),海原の月(安藤裕子),復讐(東京事変)

な、長かったーーー!! 
こうしてこれ書くのもなんか久しぶりですなぁ…というわけでこれで第一部終了です。いやー御疲れ様でした!にまんもじ!(暴露) だ、だいぶ削ったんすけどネ…多いねごめん…
アッそうそう、何人かの方に「これ(20話)で終わりなんすね!」というお言葉を頂きましたが、エーちがいます ヨ!(笑顔)
残念ながら続くヨこれ。エエ、続くんすわ、全く以ってわしの自己満足でヨ…
ペースは変わらず(まぁちょっと早く)(したい)、今度はもっとBASARAよりで! 筆頭をオトコマヘに!(当社比←笑)